The worst may have been past

わからないながらも、この一連の大事故の行先が少し見通せるようになってきた。現在の炉心冷却が継続できるのなら、放射能の大気放出はゆっくりと減少して行くであろうという予測だ。各地の放射線レベルが低下していることからもこれは伺われる。こと地上の汚染に関しては最悪は脱したかもしれない。
問題は炉心冷却の方法だ。これは注水によって担保されている。だが入れた水はどうなっているのか。炉心に水をかければ蒸気になる。蒸気はまた水に戻すか、蒸気として放出するかだが、蒸気放出は好ましくないし、現在までに数回しか行われていないようだから、恐らくサプレッションチャンバ(圧力抑制室)に導入されて水に戻しているのだと想像される。ここで不思議なのはサプレッションチャンバに蓄えられている水が沸騰しないのかということだ。ここは海水などで積極的には冷却していないはずだ。沸騰してしまってもおかしくはない。時折格納容器の圧力が上がりすぎたのはこのためかもしれない。だが、あまり問題視されていないところを見ると、どういうわけか冷却されてここで水に戻っているということなのだろう。そのおかげでサプレッションチャンバの水は満杯になってしまった。なってしまった、というか、なるに決まっている。一日あたりの注水量は200m3。サプレッションチャンバの水はもともと3000m3入っている。さらにもう3000m3の気積がある。事故発生後15日でサプレッションチャンバは満杯になっているはずだ。現に満杯であることが先日確認された。わかりきったことが起こっただけなのに、なぜみんな新たな発見のように言ったのかは謎だ。タービン建家の水たまりは、これが漏れ出てきているに違いない。
放射性物質はもともと大量に燃料棒の中にある。だが、まずペレット、次ぎに被覆管、圧力容器、格納容器、原子炉建家、と鉄壁と見られた5重の防護は電源喪失という一事でやすやすと破られてしまった。それでもまだ放射性物質の大半90%くらいは燃料棒(もう棒とは言えないかもしれないが)の中にある。しかし今はそれを注入された水で徐々に外へ向かって運び出し拡散していることになる。本来なら満杯になることがわかりきった外部からの水の注入ではなく、内部で循環する水で冷却すべきだし現在もそこに向かって努力をしているのだが、全機が正常に冷却系を復活できる可能性は少ないのではないか。そうなると、冷却水の処理は新聞でも言われているように大変な問題だ。水は漏れる。海へ、地下水へと。最終防衛ラインは現在この水際になってしまった。特にサプレッションチャンバが破損しているとされる2号機は高濃度の冷却水が出てきているだけに深刻な問題だ。このラインの防衛は難しい。溢れないように注意して信頼性の高い貯蔵タンクに移すしかないのかもしれない。海洋の汚染はこれからも続く可能性も高い。注水を不要にするために、くみ上げた汚染水をもう一度供給して冷却することはなぜできないのだろうか。その水の汚染のレベルは上がっていくだろうが、少なくともきれいな水を新たに汚染させて全体量を増やすことはない。汚染水を浄化して供給することだって可能なはずだ。是非考えてもらいたい。(誰かがとっくに考えているだろうけど)汚染レベルが上がるのがいやなら方法はある。問題になっているのがヨウ素だから、硝酸銀と反応させればヨウ化銀として沈殿する。フィルターで除去できるではないか。
海洋汚染も深刻だ。野菜はそこにじっとしているが、魚は動き回る。食物連鎖もある。日本産の食物輸出は全滅となる可能性もある。

後は、「爆発的事象」が絶対に起こらないことを祈る。それさえなければ、日常生活という意味では徐々に収束に向かいそうな雰囲気が見えてきた。